大人でよく寝るのは発達障害?特徴・眠くなる原因・対処法を紹介
大人の発達障害である自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)などがある人では、睡眠リズムの乱れや寝つきの悪さなどの睡眠の問題や、昼間の眠気を伴うケースがあります。
特に車を運転する仕事やオフィスワークをする人にとって、強い眠気は社会生活に大きく影響する可能性があるため、原因を明確にしたうえで適切な治療を受けることが大切です。
この記事では、発達障害でよく眠くなる原因と対処法について紹介します。
発達障害は、大人になって初めて発覚するケースも少なくありません。自覚がない人も、睡眠の悩みがある場合は参考にしてください。
発達障害では眠くなりやすい?
ASDやADHDなどの発達障害がある人は、睡眠障害を併発する可能性が高いため眠くなりやすい傾向があります。
発達障害の人は、睡眠の質の低下や睡眠リズムの乱れによって睡眠不足を引き起こしやすいとされていますが、原因については明らかになっていません。
睡眠障害では、夜に十分睡眠を取っているにも関わらず昼間も眠気に襲われる場合があり、日常生活に支障をきたすケースも多いです。
発達障害に多い睡眠の悩み
発達障害の人は、以下の睡眠障害に悩まされやすい傾向があります。
不眠障害
不眠障害は、寝つきの悪さや眠りが浅いことが原因で睡眠の質が低下し、睡眠時間が不足する症状です。
睡眠不足を引き起こすため、日中の活動で疲れやすくなったり、集中力が低下したりします。
また体調不良や感情の起伏の変化を起こしやすくなるため、日常生活に支障がでる可能性があります。
不眠症は発達障害に限らず、アルツハイマーやパーキンソン病などの神経疾患やうつ病とも因果関係があり、不安や緊張、ストレスなどがあると不眠につながりやすいです。
過眠障害
過眠障害は、睡眠時間が十分でありながら日中にも強い眠気を伴う疾患で、昼の活動に支障をきたす問題が起こります。
過眠障害には、ナルコレプシー・特発性過眠症・反復性過眠症などの種類があり、いずれも10〜20代の若い世代で発症するケースが多いため、学業や仕事に影響する可能性が高いです。
脳の腫瘍や頭部の外傷に加え、アルコールや薬の副作用などが原因で引き起こされるとされています。
悪夢障害
悪夢障害とは、睡眠時に恐怖や不安を感じる内容の夢を繰り返し見てしまう状態です。
目が覚めた時に夢の内容を覚えているのが特徴で、眠りが浅くなったり眠ることに抵抗を感じたりするため、日中の活動に悪影響を及ぼします。
悪夢障害の原因としては、日常生活におけるストレスや、事故・事件などの出来事、薬剤・アルコールの影響などが挙げられます。
また発達障害だけではなく、心不全やがん、うつ病が原因で悪夢障害を引き起こすケースも少なくありません。
概日リズム睡眠障害
概日リズム睡眠障害とは、睡眠のリズムが乱れることで、一般的な夜の時間帯に眠り、朝になったら起きる、というサイクルに睡眠時間を合わせられない状態を指します。
昼夜逆転するタイプや夕方からすでに睡魔に襲われて早朝近くに目が覚めるタイプ、就寝時間・起床時間が少しずつずれるタイプ、一日のなかで不規則に睡眠時間を確保するタイプなどさまざまなタイプがあります。
夜勤や日勤の繰り返しや長期休暇のように好きなタイミングで睡眠をとれる機会、脳の疾患によって引き起こされる体内時計の調節機能の異常などが原因です。
睡眠障害の特徴
睡眠障害には、以下のような特徴があります。
- ベッドに入ってからなかなか寝付けない
- 夜中よく目が覚める
- 寝る時間や起きる時間にばらつきがある
- 予定より早く目覚める
- 起きたい時間に起きられない
- 寝起きなのに疲れている感じがする
- 日中に強い眠気を感じる
- いびきをかく
睡眠障害があると、睡眠のリズムが不規則になったり、寝つきが悪いことで早く目覚める・朝に起きれないなどの症状がみられたりします。
その結果睡眠時間が十分に確保できず、昼の活動時間に眠気を感じるため、日常生活に支障をきたすケースがあります。
人によって睡眠障害のタイプや原因が異なるため、自身の睡眠障害の特徴を把握したうえで適切な治療を受けることが大切です。
発達障害でよく眠くなるのはなぜ?
発達障害の人が眠くなりやすいのには、以下の理由があります。
睡眠を十分にとれないため
発達障害では睡眠障害を併発しやすいため、睡眠を十分にとれずに眠くなる可能性があります。
睡眠障害があると睡眠の質が低下し、十分な時間眠っていても睡眠不足になりやすいです。
また夜の決まった時間に睡眠をとっている場合でも、眠りが浅かったり度々目が覚めてしまったりするケースではよく眠れているとは言えません。
このように、さまざまな睡眠の問題が昼間の眠気につながります。
興味がないことに退屈するため
発達障害では、興味がないことをしているあいだはやる気が起きず、退屈することで眠くなりやすい傾向があります。
一般的に眠気は寝不足や良質な睡眠がとれていない状態下で引き起こされますが、ADHDの患者さんでは、意欲が落ち込んでいる場合や集中力が低下している場合にもみられやすいです。
反対に、興味があることに取り組んでいるケースや気分が上昇しているケースでは、意識を保っていられる傾向があります。
薬の副作用があるため
発達障害の人の眠気には、内服薬の副作用が関係している場合があります。
抗不安薬や抗うつ薬は副作用として眠気を伴うケースがあるほか、市販の風邪薬やアレルギー薬には脳の覚醒に働きかけるヒスタミンの作用を抑える効果があります。
そのため、これらの薬を服用している患者さんでは発達障害の有無に関わらず昼間でも眠くなる可能性が高いです。
特に高齢者ではヒスタミンの代謝に時間がかかるため、薬の副作用による眠気を感じやすくなります。
寝すぎることで起こる問題
発達障害ではさまざまな要因からよく寝る状態になるケースがありますが、睡眠をとりすぎることで起こる問題もあります。
頭痛や肩こりを引き起こす
睡眠時間が長くなると、頭痛や肩こりなどの症状を引き起こすことがあります。
長時間横になった状態が続くと、筋肉に負担がかかることで血行が悪くなり、肩や腰、首などに筋肉痛のような症状を伴う可能性があります。
また、寝すぎることで血管が拡張と拍動を繰り返すため、三叉神経が刺激されて片頭痛のような頭痛が生じるケースも多いです。
体重が増加する
睡眠時間が標準より短い人と長い人では、体重増加のリスクが上昇するとされています。
成人の適正な睡眠時間は6~8時間(※)とされていて、普段5~6時間しか睡眠時間を確保できていない人と、9~10時間以上眠る習慣がある人は、適正な睡眠時間で生活している人よりも生活習慣病・うつ病の発症や死亡の危険性が高まる傾向があります。
睡眠時間が長くなることで発生する運動不足や消費カロリーの減少が、肥満につながるとされている要因です。
(※出典:厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』)
心疾患のリスクが上昇する
9時間以上の睡眠をとる習慣がある人は、心筋梗塞・狭心症・心不全などの心疾患の発症やそれに伴う死亡のリスクが高まるとされています。
そのほか、高血圧症や脳梗塞の死亡リスク上昇にも関与することが報告されています。
認知機能が低下する
寝すぎる傾向がある人は、認知機能が低下する可能性があるため注意が必要です。
適正な睡眠時間では睡眠の前半と後半でレム睡眠とノンレム睡眠が交互に現れますが、睡眠時間が長くなると、脳を活発に活動させるレム睡眠の割合が増えるため、脳の休息が不足します。
また身体が横たわっている時間が長いと、血行が悪くなることで脳への酸素と栄養の供給が十分に行われず、集中力や記憶力、判断力が低下すると考えられています。
特に5時間未満もしくは9時間以上の睡眠時間をとる習慣がある高齢の方の場合、認知機能低下の懸念があります。
発達障害による睡眠障害への対処法
発達障害に合併する睡眠障害への効果的な対処法は、人によって異なります。
以下の方法を参考にしながら、自分に合った方法を模索してみましょう。
ストレスを解消する
ストレスは、眠気を誘発するホルモンであるメラトニンを減少させるため、睡眠の質を下げる原因になります。
また睡眠不足はストレスへの抵抗力を低下させる要因になるため、悪循環を断ち切るためにも、ストレスを溜めない・適度に発散するなどの工夫をしましょう。
例えばADHDの人では、翌朝の支度を憂鬱に感じる場合、それが気になって起きる時の気力を低下させてしまう原因になるため、前日のうちに準備を済ませておくのが望ましいです。
準備を忘れてしまう場合は、メモやスマホのアラーム機能を用いたり、玄関に張り紙をするなどの工夫をすることで、先延ばし癖の改善にも効果が期待できます。
ストレスへの対処法はさまざまありますが、発達障害の場合は、自分のストレスの特性を理解することで環境や行動などの原因となる要因を排除したり、ストレスへのアプローチ法を身につけましょう。
自分だけで対処しようとせず、信頼できる医師に相談し、自分の特性に合った具体的な対策についてアドバイスをもらうことが大切です。
寝る時間よりも早めに消灯する
睡眠障害を改善するためには、できれば2時間、遅くても寝る1時間前には消灯し、スマートフォンやタブレットなどの端末画面を閉じて眠るのがおすすめです。
入眠直前までこれらの画面を見るとメラトニンの分泌量が減少するため、スムーズに眠りにつけません。
真っ暗な状態で眠るのが苦手な場合は、間接照明などを取り入れましょう。
発達障害の人はゲーム依存症になったりネットサーフィンに夢中になったりすることで就寝時間が遅くなる傾向があります。
一日の行動パターンを計画する際に、ベッドに入る時間や消灯する時間、スマートフォン・タブレットの画面を閉じる時間を細かく設定するなどの工夫がおすすめです。
毎朝日光を浴びる
睡眠の質を上げるためには、毎朝決まった時間に日光を浴びるのが効果的です。
決まった時間に起きる習慣がつくだけではなく、日光を浴びることで身体がスッキリと目覚め、睡眠時のメラトニン分泌を促進することにもつながります。
朝起きるのが難しい場合は、あえてカーテンを開けて寝ることで決まった時間に日光を感じて起きることが可能です。
日光を浴びるルーティーンに加えて、起床時間と入眠時間を記録し睡眠リズムを管理することで、概日リズム睡眠障害の改善にも効果が期待できます。
バランスのいい食事を心掛ける
栄養バランスの偏りは睡眠に影響を及ぼす可能性があるため、バランスの良い食事を意識しましょう。
鉄分・亜鉛・食物繊維・ビタミンを中心に摂取することで、睡眠の質を高める効果が期待できます。
特にASDがある患者さんでは、偏食が原因で睡眠障害を引き起こすケースもあるため注意が必要です。
まとめ
発達障害があると、大人・子どもに関わらず睡眠障害を発症するリスクが高まります。
生活リズムの調整やストレスへの対処法を試行錯誤し、快適な睡眠を獲得することも大切ですが、どうしても昼間の眠気に悩まされる場合は、無理せず精神科や心療内科に相談しましょう。
ラベンダーメンタルクリニック浜松町では、睡眠障害に悩むASDやADHDなどの発達障害の方が生活しやすいように、オーダーメイドの治療を行います。
睡眠障害がない方も、個性や特性が活かせる生き方を一緒に模索し、日常生活が上手くいくように親身にサポート致します。
睡眠の悩みがある方、発達障害にお悩みの方は一度お気軽にご相談ください。
執筆者
ラベンダーメンタルクリニック浜松町 院長・医学博士
中野 和歌子
- 日本精神神経学会精神科専門医・指導医
- 精神保健指定医
- 産業医科大学産業医学基本講座修了、日本医師会認定産業医
- 日本臨床精神神経薬理学専門医(精神科薬物療法専門医)
- 日本禁煙学会認定専門医
- 臨床研修指導医
- コンサータ処方医登録
- セリンクロ処方医
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