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抗うつ薬の使い分け(薬物相互作用、タモキシフェン)

[2026.01.13]

抗うつ薬とタモキシフェンの相互作用について

抗うつ薬と他科での服用薬との相互作用について記載します。当院は乳腺外科様からのご紹介の患者様も多く、乳がんの再発予防薬であるタモキシフェン(商品名:ノルバデックスなど)を内服されている方がいらっしゃいます。

相互作用のメカニズム

タモキシフェンは、体内でそのまま働くわけではありません。肝臓の代謝酵素であるCYP2D6によって代謝され、エンドキシフェンという非常に活性の強い物質に変化することで初めて、強力な抗腫瘍効果を発揮します。

一部の抗うつ薬は、この「CYP2D6」という工場を強くブロック(阻害)してしまいます。

問題点: 抗うつ薬が工場を塞ぐ → タモキシフェンが活性体(エンドキシフェン)に変われない → 乳がんの再発予防効果が弱まるリスクがある。

抗うつ薬の阻害作用による分類

抗うつ薬は、CYP2D6をブロックする力の強さによって、以下のように分類されます。

阻害の強さ 薬剤名(一般名) タモキシフェンとの併用
強い(Strong) パロキセチン(パキシル) 原則避けるべき
中程度(Moderate) セルトラリン(ジェイゾロフト)
デュロキセチン(サインバルタ)
注意が必要
弱い(Weak / Negligible) エスシタロプラム(レクサプロ)
フルボキサミン(ルボックス)
ボルチオキセチン(トリンテリックス)
ベンラファキシン(イフェクサー)
ミルタザピン(リフレックス)
 

タモキシフェン服用患者への抗うつ薬の選び方:推奨される薬剤

当院では、がん治療の効果を最大限に尊重しつつ、以下の薬剤を優先して検討します。

  1. イフェクサー(ベンラファキシン) CYP2D6への影響がほぼ皆無で、非常に安全です。さらに、タモキシフェンの副作用である「ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)」を軽減する効果がエビデンスとして確立されており、海外のガイドラインでも第一選択とされています。

  2. エスシタロプラム(レクサプロ) 相互作用が少なく、不安感や落ち込みに対してバランスよく働きます。

  3. トリンテリックス(ボルチオキセチン) 新しいタイプのお薬で、タモキシフェンへの影響が少ないだけでなく、「頭がぼーっとする(ケモブレイン)」などの認知機能の悩みにも適しています。

  4. ミルタザピン(リフレックス・レメロン) 相互作用が少なく、特にお休みになれない(不眠)や食欲低下が強い方に有効です。

当院での診察の流れ:がん治療との両立

ラベンダーメンタルクリニック浜松町では、以下のようなステップで診療を行います。

  • ステップ1:治療状況の確認 乳腺外科で処方されているお薬や、現在のホルモン療法の期間などを詳しく伺います。

  • ステップ2:お困りごとの優先順位付け 「気持ちのつらさ」が主なのか、「ホットフラッシュなどの身体症状」が主なのかを整理し、最適な一錠を選びます。

  • ステップ3:外科主治医との連携 必要に応じて、乳腺外科の主治医の先生へ情報提供を行い、チームであなたの治療を支えます。

参考文献

  • Loprinzi CL, et al. Venlafaxine in management of hot flashes in survivors of breast cancer: a randomised controlled trial. (The Lancet, 2000)
  • Kelly CM, et al. Selective serotonin reuptake inhibitors and breast cancer mortality in women receiving tamoxifen. (BMJ, 2010)

  • Jin Y, et al. The CYP2D6 genotype predicts tamoxifen metabolism in postmenopausal women with early-stage breast cancer. (Journal of Clinical Oncology)

まとめ

抗うつ薬の使い分け(薬物相互作用、タモキシフェン)について解説をしました。

ラベンダーメンタルクリニック浜松町は、浜松町駅から徒歩2分、大門駅B5出口直結の位置にある精神科・心療内科クリニックです。

当院の院長は、大学病院で長く勤務した経験があり身体疾患との併存した精神疾患への治療も得意としています。小さいクリニックですので精査は出来る範囲のことに限られますが必要な場合は信頼できる専門の施設へ責任をもって紹介いたします。乳がんに限らず、がんや大きな身体的な病気を罹患した場合、治療は長期化し心身ともにエネルギーを必要とするものです。「治療中だから、気分の落ち込みは我慢しなければならない」ということは決してありません。当院では患者さんの特性や症状に合わせてオーダーメイドの治療や支援を提供するため、お薬へのご不安を抱えた方は一度お気軽にご相談ください。

執筆者

ラベンダーメンタルクリニック浜松町 院長・医学博士
中野 和歌子

  • 日本精神神経学会精神科専門医・指導医
  • 精神保健指定医
  • 産業医科大学産業医学基本講座修了、日本医師会認定産業医
  • 日本臨床精神神経薬理学専門医(精神科薬物療法専門医)
  • 日本禁煙学会認定専門医
  • 臨床研修指導医
  • コンサータ処方医登録
  • セリンクロ処方医
  • 電車でお越しの場合
    浜松町駅北口から徒歩2分
  • 地下鉄でお越しの場合
    大門駅B5出口直結
  • バスでお越しの場合
    都営バス大門駅1番乗り場、3番 乗り場から徒歩2分
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