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認知症は改善できる?治療法や進行を遅らせるための対策

[2025.05.12]

認知症は、なんらかの原因で脳細胞がダメージを受けて認知機能に問題が発生した状態で、記憶力や判断力が低下することで日常生活に支障をきたします。

高齢の方に多いイメージがありますが、若い人にも発症するケースがあるため、予防したり適切な治療を受けたりすることが大切です。

では、一度認知症になった人が回復するケースはあるのでしょうか。

この記事では、認知症は改善できるのか、予防にはどのようなことに気を付けたらいいのかを紹介します。

家族に認知症の可能性がある人や、早い段階での予防を考えている人は参考にしてください。

認知症は改善できる?

一般的に認知症は完治ができない疾患とされていますが、原因や種類によっては改善できるケースがあります。

脳細胞の破壊・変質が原因で引き起こされる認知症は回復しませんが、脳以外に原因があったり外科手術で治療が可能であったりする認知症は回復の見込みがあります。

完治しないタイプの認知症も、適切に治療を行うことで症状を軽減したり、進行を遅らせたりすることが可能です。

症状が緩和されることで本人だけでなく介護者の負担も軽くなるため、記憶力の低下や出来ていたことが急に難しくなった場合は早めに専門の医療機関を受診しましょう。

認知症の主な種類と特徴

認知症の主な種類と特徴は以下の通りです。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、アミロイドβやタウタンパク質などのタンパク質が沈着して脳の神経細胞を破壊し、脳が萎縮することで引き起こされる認知症で、治す方法は確立されていません。

認知症患者の半分以上の割合を占め、男性と比較すると女性の方が有病率が高いとされています。

アルツハイマー型認知症でみられる症状は以下の通りです。

  • 数分前の出来事を忘れる
  • 日付や時間が分からない
  • 出来ていたことができなくなる
  • 複数のことを同時にこなせない
  • 言葉にするのが難しい
  • 見ているものや聞こえている音の認識ができない

アルツハイマー型認知症では、数分前にしたことや聞いたことを忘れてしまったり、今まで出来ていた料理や洗濯などの家事の手順が分からなくなったりします。

ただし、昔のことや最近の出来事以外のことは覚えているケースが多いです。

症状が進行すると、家族のことを忘れてしまったり、聞いたことを理解できず自分の言葉も上手く伝えられないことでコミュニケーションに問題が発生したりします。

血管性認知症

血管性認知症は、脳に血液が行き渡らずに一部が壊死することで生じる認知症で、アルツハイマー型認知症の次に有病率が高いです。

高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病が脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を引き起こし、脳の血流が阻害されることで発症します。

生活習慣の改善によって予防が可能ですが、発症後の完治は難しいとされている疾患です。

血管性認知症でみられる症状は以下の通りです。

  • 歩行が困難になった
  • 手足にしびれ・麻痺がある
  • 感情の起伏が激しい
  • ものが飲み込みにくい
  • うまく喋れない

血管性認知症では脳の破壊された部分によって症状が異なるため、出来ることが多いのに特定のことが全く出来なくなるケースがあります。

脳の神経細胞が壊れることで、歩行障害や手足のしびれ、嚥下障害などを引き起こします。

また代表的な症状として感情失禁があり、些細なことで泣いたり突然大笑いしたり、感情のコントロールができないのが特徴です。

血管性認知症は発作を繰り返すことで段階的に重症化していき、次第に他の症状も現れ始めます。

進行すると会話困難や視力低下、排尿障害を引き起こすケースもあるため、再発作を予防して症状の進行を遅らせることが大切です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、レビー小体という特異的なタンパク質が脳にたまり神経細胞を破壊することで生じる認知症です。

原因は明確ではなく、完治が出来ないとされていますが、パーキンソン病やうつ病などの疾患やストレス、抗精神病薬・抗不安薬などの薬物療法がリスク要因になると考えられています。

レビー小体型認知症でみられる症状は以下の通りです。

  • 手足の震えや身体の強張りがある
  • 妄想や幻覚がみられる
  • 不安を感じやすく情緒不安定になる
  • 睡眠時に暴れる・大声を出す
  • 血圧や脈拍の変動がみられ、汗をかきやすくなる

レビー小体型認知症の特徴的な症状には、妄想・幻覚やパーキンソン症状、睡眠時の異常行動などがあります。

理由がないのに他人に嫌われていると不安になったり、ものを盗まれた・泥棒がいるなどの妄想を話す症状が、比較的早い段階で見られるケースが多いです。

また、手足の震えや身体の強張りで思うように歩けない、早く動けない・急に止まれないなど、パーキンソン病のような症状が出現します。

さらに、強い不安を感じる症状の有無は、レビー小体型認知症の診断基準に使用されます。

意識が明確な状態とぼーっとした状態を繰り返すことで症状が進行しますが、薬物治療によって進行を遅らせることが可能です。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳に異常構造物(ピック球)やタンパク質が蓄積することで前頭葉や後頭葉が変性・脱落して引き起こされる認知症で、60歳未満で発症するケースもあります。

初期に認知症特有の物忘れの症状が見られない可能性が高いため、発見が遅れやすい疾患です。

前頭側頭型認知症でみられる症状は以下の通りです。

  • 以前と性格が変わった
  • 社会的に問題がある行為をする
  • 他人に対して攻撃的になる
  • 同じ言動を繰り返す
  • 偏食や過食がみられる
  • 身だしなみに無関心になる

前頭側頭型認知症が進行すると、性格が大きく変化することで周囲の人から避けられるようになる可能性があります。

万引きや信号無視などの反社会的な行動をするようになったり、嫌味を言うようになったりする場合があり、暴力を振るうようになるケースも懸念されます。

誤嚥や呼吸筋の麻痺などの症状が出現する可能性があり、早いと数年で命を落とすとされているため、原因となる前頭側頭葉変性症は難病に指定されている疾患です。

進行を遅らせる治療法は確立されておらず、対症療法やグループホームなどを利用して対処する必要があります。

認知症の治療法

認知症は、一部を除いて基本的には完治が不可能とされていますが、適切な治療を受けることで症状を緩和したり、進行を遅らせたりすることが可能です。

認知症で選択される治療法には以下のものがあります。

薬物療法

認知症に対する薬物療法は、中核症状の進行の抑制や、行動・心理症状の軽減を目的として行われます。

認知症を完治させたり、進行を食い止めたりは出来ませんが、できるだけ症状を軽い状態で持続させるために必要です。

認知症は発症したら一生付き合っていく必要があるため、薬物療法では服薬を継続することが大切です。

自己判断で中断したり服用量を増やしたりすることは避け、医師の指示に従いましょう。

非薬物療法

認知症の非薬物療法は、脳の活性化によって認知機能の低下を遅らせたり、生活の質を高めて心の健康を維持したりするために行います。

リハビリテーションや運動療法のほか、園芸・音楽療法、過去の記憶を振り返る回想法などさまざまな方法があります。

また、血管性認知症では食生活の改善や運動、禁煙やお酒を控えるなどの健康管理も治療法として重要です。

脳外科手術

正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、脳腫瘍などが原因で認知症の症状が出ている場合、脳外科手術によって改善できる可能性があります。

ただし脳腫瘍の治療の場合は放射線治療や化学療法を要するケースがあり、腫瘍が悪性の場合には認知症の経過観察が非常に重要です。

外科手術によって治る認知症でも、対処が遅れて症状が悪化すると治療後の認知機能の回復に影響を及ぼすリスクがあるため、早めに医療機関を受診しましょう。

認知症の治療に使用される薬物の種類

認知症の治療に使用される薬物には、以下の種類があります。

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は、脳の神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する酵素の働きを抑制する効果があります。

認知症になると減少するアセチルコリンの分解を妨げることで、記憶力の維持や集中力への作用を高める効果が期待できます。

認知症の薬物治療で使用される代表的な抗認知症薬で、主にアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の中核症状緩和に効果的です。

NMDA受容体拮抗薬

NMDA受容体拮抗薬は、興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸が結合するNMDA受容体が活性化するのを抑制する薬で、神経細胞の損傷を防止する役割を果たします。

NMDA受容体拮抗薬がNMDA受容体に結合することでグルタミン酸の結合が阻害され、刺激が緩和されるため、情報伝達機能の働きを整える効果が期待できます。

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬は、どちらも認知症そのものの回復効果はないため、薬物療法を受けながら非薬物療法でアプローチを行うのが有効です。

その他

認知症の行動や心理状態を引き起こす周辺症状を軽減させるために、睡眠導入剤や抗うつ・抗てんかん薬、抗精神病薬や漢方薬などが使用されるケースもあります。

睡眠障害や興奮症状がみられる患者さんや、幻覚・妄想などの症状がある患者さんが少しでも安らげるように、医師の判断によって処方されます。

ただし、レビー小体型認知症の患者さんは抗精神病薬で症状が悪くなることがあり、可能な限り薬を使わない方法が推奨されています。

認知症がある人のなかには血圧や糖尿病の薬を服用している人もいるため、常用薬がある場合は医師に相談のうえ飲み合わせに注意が必要です。

認知症の進行を遅らせるためにできること

大半の認知症は完治の方法が確立されていないため、本人の取り組みや周囲のサポートによって進行を遅らせることが大切です。

ここからは、認知症の進行を遅らせるための工夫を紹介します。

適度な有酸素運動を取り入れる

有酸素運動は認知機能の維持や生活習慣の改善に役立ち、軽く身体を動かすだけでも効果が期待できます。

ポイントは、気が向いたときだけではなく毎日動くことです。

ランニングやサイクリングなどの激しい運動は認知症予防には有効ですが、体力的にもきつく習慣化しづらかったり怪我のリスクが高まったりするため、無理せず軽い運動から始めましょう。

家の近くを散歩をしながら家族や友人などとコミュニケーションをとるのもおすすめです。

生活リズムを整える

心身の健康を保つために、規則正しい生活リズムを送りましょう。

認知症では睡眠障害になるケースがあるため、起床・就寝のリズムを整えて質の良い睡眠をとれるように工夫することが大切です。

見当識障害がある場合は、睡眠・食事・運動をするタイミングを毎日同じ時間に決めることで時間感覚を正常に保つ効果が期待できます。

認知機能向上に効果的なトレーニングを行う

認知機能を向上させるために、脳を活性化させるトレーニングを積極的に取り入れましょう。

何もせずぼーっと生活していると、認知症の進行も順調に進んでしまいます。

音楽鑑賞や塗り絵、パズルゲームなどを取り入れたり、家族のサポートを受けながら料理したりするのがおすすめです。

積極的に他者と交流する

一緒に暮らしている家族以外の人と積極的に交流することは脳への刺激になり、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。

人と過ごすことで、無気力感や孤独感の軽減にもつながります。

遠方に住んでいる友人や孫に会うこともよい刺激になりますが、デイサービスやグループホームで知り合った同年代の人や職員さんと関わることで新しく交友関係を構築するのも効果的です。

耳の聞こえが悪くならないように対策する

聴力が低下すると認知症の進行が早まるリスクがあるため、耳の聞こえが悪くならないように対策することが大切です。

上手く音が聞こえないと、人との会話がしづらくなったり音楽を楽しめなくなったりします。

また聴力が低下することで外部からの情報を脳に伝達しにくくなるため、脳細胞の働きが弱まる原因になります。

聞き返す回数が増える、会話が成立しなくなったなどの異変がみられたら、耳が聞こえにくくなっている可能性があるため、必要に応じて補聴器を活用しましょう。

まとめ

基本的に認知症は完治のための薬や手段が確立されていないため、予防や進行を遅らせる工夫をすることが大切です。

ただし、原因によっては、手術や適切な治療を行うことで治る認知症もあるため、早期発見と医療機関の受診が重要になります。

ラベンダーメンタルクリニック浜松町では、精神科の薬物療法に特化した医師が、薬物療法・精神療法・生活指導・運動指導などを通して患者さんに寄り添った治療を提案します。

当院は、浜松町駅・大門駅からのアクセスがよく、心に不安を抱えている方が来院する際に負担を感じない立地にあります。

認知症の初期症状がある方や、認知症の症状に悩まされている方は、ご家族と同伴での来院でもかまいませんので、お気軽にご相談ください。

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