発達障害の人が疲れやすい理由は?対処法・うまく付き合っていくコツを紹介
発達障害の人は、考えることが多かったり身体が思うように動かせなかったりすることで疲れやすいとされています。
しかし、疲れる状態や原因を放置していると二次障害につながる恐れがあるため、適切に対処することが大切です。
この記事では、発達障害が疲れやすい理由や対処法を詳しく紹介します。
疲れの原因に合わせたさまざまなアプローチ方法を紹介しているため、疲れやすさに悩む発達障害の人はぜひ参考にしてください。
発達障害が疲れやすい理由
発達障害の人は、以下の理由から疲れを感じやすいとされています。
環境に適応しようと気を張るため
発達障害の人は周囲の環境や人間関係に適応するのが苦手な傾向があるため、気を遣うことで疲れやすくなります。
発達障害の人は、空気を読んだり他人がどう考えるのか察知したりするのが難しいと感じるため、気を張りつめた状態になりやすいです。
例えば休憩時間は、本来であればひと休みするはずの時間であるためリラックスして過ごせるのが理想ですが、発達障害の人は、会話の輪に入るべきか・何かした方がいいことはあるかなど不要な気をまわしてしまいます。
他の人が何気なくしていることでも、発達障害の人にとっては多くのエネルギーを消費する行動であるケースは多く、普通そうに見えても無理をしている可能性があります。
ストレスを感じやすいため
発達障害ではさまざまな要因からストレスを感じやすく、それが疲れにつながるケースがあります。
社会人になると人間関係が広くなり、コミュニケーションの場も増えるため、それに上手く適応できないとストレスを感じます。
また発達障害の人はネガティブな思考に陥りやすく、できない・不安だと感じることで自己肯定感が下がりやすいです。
発達障害のストレスは、放置することで他の精神疾患につながるリスクが高いとされているため注意が必要です。
日常生活でのエネルギー消費が大きいため
発達障害のなかでも、注意欠如・多動症(ADHD)がある人は、行動量が多くエネルギーを多く消費する傾向があるため疲れやすいとされています。
ADHDでは、したいことを一つに絞ることが難しく、自分の思うままに行動に移すケースが多いため、目まぐるしく動いたり思考をめぐらせたりしがちです。
なにか予定があると睡眠時間や休憩時間を削って行動するケースもあるため、余分に体力を消耗します。
また、それをコントロールしようとすることでさらにエネルギーを消費するため、疲れやすさにつながります。
睡眠の質が低下しやすいため
発達障害では睡眠の質が低下しやすく疲労を十分に回復できないため、疲れがたまりやすいです。
発達障害は睡眠障害を併発するリスクが高く、睡眠不足になったり、必要以上に眠ってしまったりするケースがあります。
過眠でも、脳の血管が拡張し周囲の神経を刺激したり同じ姿勢で長時間横たわったりするため、疲れを感じる原因になります。
睡眠をうまくコントロールできないと心身に負担がかかるため、倦怠感だけではなく精神的なストレスを引き起こす可能性も高いです。
過集中で心身に負担がかかるため
発達障害では、興味があることに関して没頭する傾向があるため、それが疲れを感じる原因になります。
周囲の状況を顧みずに特定の作業に集中する状態のことを過集中といい、とくに自閉スペクトラム症(ASD)の患者さんに現れやすい症状です。
過集中には、通常は時間がかかる作業を短時間で終わらせられたり、物事を記憶するのが早かったりするメリットがありますが、その分多くのエネルギーを消費します。
過集中では食事や睡眠を忘れて作業に没頭するケースもあり、集中力が切れたとたん一気に疲れが押し寄せてきます。
自分でも無意識のうちに無理をしてしまうため注意が必要です。
思うように身体が動かせないため
発達障害では思い通りに身体が動かせないことがあるため、生活しているだけで疲れてしまう可能性があります。
発達性協調運動障害(DCD)には、手先が不器用なため文房具や箸を上手く使えなかったり、ものにつかまるだけで異常に強い力で握ってしまったりする特徴があります。
ストレスや身体の強張りが生じ、日常生活の至るところに疲れる要因があるケースが多いです。
感覚刺激を強く感じやすいため
発達障害では、五感による感覚刺激を強く感じるケースがあり、それが疲れにつながる可能性があります。
例えば、電車の騒音や他人のにおいが気になる場合は、通勤・通学するだけで疲労を感じるでしょう。
光・音・触覚・においなど、敏感になる感覚は人それぞれですが、ストレスとなる刺激と日常的に関わっている場合、大きな負担になりやすいです。
外出すると、これらの感覚を完全にシャットアウトすることはほぼ不可能なため、感覚過敏があるとそれだけで心身の疲れを伴いやすくなります。
発達障害で疲れやすい状態を放置するとどうなる?
発達障害は疲れやすい特徴がありますが、それを放置すると以下の問題が懸念されます。
癇癪やパニックを起こしやすくなる
発達障害の人は自身の感情や行動をコントロールすることが難しいケースがあるため、癇癪やパニックを起こしやすい傾向があります。
とくにストレスが溜まった状態では、些細なことで感情が爆発したりパニックになったりする可能性が高いです。
子どもの発達障害では、強い不安や不快感から大泣きして暴れたり、自傷行為や破壊行為がみられたりするため、本人も家族も精神的に大きな負担がかかります。
二次障害につながる恐れがある
合わない環境や苦手な人間関係があるなかでの生活を続けていると、ストレスから二次障害を引き起こす恐れがあります。
二次障害とは、すでにある障害が他の障害を新たに発生させる状態です。
発達障害は、二次障害として不安障害・強迫性障害のような内在化障害や、暴力・自傷行為などの外在化障害を伴うケースがあります。
発達障害の人はストレスに弱く対処や発散が苦手な傾向があるため、二次障害を引き起こしやすいとされています。
発達障害の疲れやすさへの対処法
発達障害が原因で疲れやすいと感じる人には、以下の対処法をおすすめします。
生活する環境を変える
自分に合わないと感じる環境を変えることで、疲れやすさの軽減につながります。
職場や学校を変えることは難しいかもしれませんが、精神科や心療内科でカウンセラーとよく相談し、適切な方法を見つけましょう。
どうしても環境を変えることが困難な場合は、一人でリラックスできる時間を設けることでストレスの溜まりすぎを予防できます。
できるかぎり他人との関わりを避けたい場合は、フリーランスの道を選択したりリモートワークが可能な職業に就いたりすることも検討しましょう。
タイマーを活用し過集中を防ぐ
過集中による疲れを防ぐためには、タイマーを活用し行動に区切りをつけるのがおすすめです。
読書やゲームなど自分が集中しやすいことをする際は、15分・30分とあらかじめ時間を決めて、その都度休憩をはさむ工夫をすることで過集中を防止できます。
タイマーで管理をすることで疲れを気にせず好きなことに取り組めるため、我慢の必要がありません。
自分に合ったリラックス法を取り入れる
疲れを溜めないために、自分に合ったリラックス法を見つけて実行しましょう。
例えば適度な運動や軽いストレッチは、エネルギーを放出することでスッキリした気分になれます。
元々身体を動かすことが得意な人は、好きなスポーツを見つけることもおすすめです。
音楽がストレスにならない人は、好きな音楽を聴くことでストレスが発散できるケースがあります。
気持ちを落ち着けるのには、川のせせらぎや鳥がさえずる声など、自然の音をBGMにするのもよいでしょう。
苦手な作業や刺激を避ける工夫をする
苦手な作業や刺激はストレスにつながる可能性が高いため、可能なかぎり避ける工夫をしましょう。
例えば文房具が上手く使えない場合には持ちやすくて使いやすい文房具を選択したり、靴紐が上手く結べない場合は靴紐のない靴を選ぶことでストレスを軽減できます。
また感覚過敏が疲れを引き起こす場合は、音を遮断するイヤホンを使用したり人ごみを避けられる時間やルートを選択したりする工夫が推奨されます。
苦手とする刺激は人によって異なるため、対策の方法も十人十色です。
自分でいい対処法が思いつかない場合は、家族や信頼できる人に相談し一緒に解決策を模索することも大切です。
睡眠の質を高める工夫をする
睡眠不足だと疲労の回復が十分に行えないため、睡眠の質を高める工夫をし熟睡できるように努めましょう。
睡眠の質の低下にはストレスが大きく関係するため、ストレスを解消しリラックスした状態で寝床につくことが大切です。
そのほか入浴の仕方を工夫したり、寝る直前までパソコンやスマートフォンなどを操作することを避けたりすることも効果的です。
睡眠の質を高めると同時にリズムを整えることで健康的な睡眠習慣が身につくため、就寝・起床時間の管理も意識して行いましょう。
発達障害では睡眠障害を併発するリスクが高いとされているため、睡眠の問題に悩まされる場合は精神科や心療内科の受診が推奨されます。
発達障害と上手く付き合っていくためには
発達障害の症状を完全に取り除くことは難しいため、以下のような工夫や考え方次第で上手く付き合っていくことが大切です。
自分の特性を理解する
発達障害についての正しい知識を身につけ、自分自身の特性についてよく理解することが大切です。
自己理解を深めることで、自分に合った環境や人間関係、働き方の構築が可能になります。
具体的に何をすればいいのか分からない場合は、カウンセリングやリハビリテーションプログラムを利用しましょう。
安心できる環境や人間関係のもとで生活する
発達障害では人との関わりや特定の刺激が苦手であるケースが多いため、安心できる環境や人間関係のもとで生活することが大切です。
自分に合わない状況下で生活することで症状が悪化したり二次障害を引き起こしたりするケースがあるため、無理は禁物です。
家族だけでなく、理解のある友人やピアサポートで出会った仲間など、信頼できる人との関わりを大切にしましょう。
また感覚過敏がある場合は、不快な刺激を避けるための工夫をして安らげる環境を整えることが大切です。
他人と上手に関わるスキルを身につける
発達障害では人とのコミュニケーションが苦手だと感じるケースが多いため、他者と上手に関わるスキルを身につけることが重要です。
発達障害の有無に関わらず、専門の医療機関や就労支援センターなどさまざまな場所でソーシャルスキルを身につけるトレーニングが受けられます。
ソーシャルスキルは、ストレスの対処や人間関係の構築を円満に行うために必要なスキルです。
他人の考えや場の空気を読むことが難しいと感じる場合でも、ソーシャルスキルを養うことで生活しやすい環境を自分で作り上げられるように努めましょう。
信頼できる相談先を見つける
不安や悩みを一人で抱え込むと心身に負担がかかるため、信頼できる相談先を見つけることが大切です。
ただし、発達障害から発生する問題を相談するのは、専門の知識がある人でなければいけません。
精神科・心療内科や発達障害者支援センターなど、相談に対応している機関はさまざまですが、信頼できるところを見つけておくことで、いざという時の困りごとに迅速に対応できます。
まとめ
発達障害の人が疲れやすい理由や、疲れないための対処法を紹介しました。
発達障害で感じる疲れには、肉体的なもののほかに気疲れのように精神的な疲れもあります。
過集中などで疲れを溜めやすい状況に気が付かないケースもあるため、心身ともに健康でいるためにも、自己を理解・管理して対策することが大切です。
ラベンダーメンタルクリニック浜松町では、精神疾患を取り扱う医療現場での経験が豊富な医師がエビデンスに基づいた質の高い治療を提供します。
また精神科の薬物治療に特化しているため、発達障害から発生した二次障害がある場合にも適切な治療法の選択が可能です。
セカンドオピニオンやオンライン診療にも対応しているため、初めての方も、他院からの変更を考えている方もお気軽にお問い合わせください。