減酒外来とは?減酒治療補助アプリ「HAUDY(ハウディ)」が当院でも使用可能になりました。
減酒外来とは?
減酒外来は、「お酒をやめる」ことを強制するのではなく、「お酒と上手に付き合う」ことを目指す専門的な診療科です。完全な断酒が難しいと感じている方や、お酒の量を減らしたいと考えている方を対象に、医師や看護師等の専門のスタッフが個別のサポートを提供します。
減酒外来の目的
減酒外来の主な目的は、お酒の量を減らすことによって、心身の健康状態を改善し、生活の質を高めることです。お酒の量が減れば、睡眠の質の向上、肝機能の改善、血圧の正常化といった身体的な変化だけでなく、気分が安定したり、人間関係が良好になったりといった精神的な変化も期待できます。
また、飲酒量を減らすことは、将来的なアルコール依存症への移行を防ぐ予防的な意味合いも持ちます。
減酒外来の対象となる方
減酒外来は、以下のような悩みや状況を抱えている方が主な対象となります。
- 飲酒量を減らしたい方:健康診断で飲酒量を減らすよう指摘された、または自分自身でお酒の量が多いと感じている方。
- 飲酒のコントロールが難しい方:予定していたよりも多く飲んでしまう、または「やめよう」と思ってもやめられない方。
- 飲酒が原因で不調を感じる方:睡眠障害、気分の落ち込み、不安感、肝機能の数値が悪化しているなど。
- 飲酒しないと落ち着かない方:ストレスを感じたときや暇なときに、ついお酒を手に取ってしまう方。
減酒外来は、必ずしもアルコール依存症の診断を受けている方だけが対象ではありません。「ちょっとお酒の飲み方を見直したいな」と感じたら、気軽に相談できる場所です。専門家と話をすることで、自分のお酒との付き合い方について客観的に見つめ直すことができます。
減酒治療薬:セリンクロについて
セリンクロ(一般名:ナルメフェン)は、アルコール依存症の患者さんの飲酒量を減らすことを目的として、2019年に日本で承認された新しいタイプの治療薬です。
これまでのアルコール依存症の治療は、原則として「断酒(お酒を完全にやめる)」が目標でした。しかし、断酒が難しいと感じる方にとっては、治療へのハードルが高いものでした。セリンクロは、そうした方々に対して、まずはお酒の量を減らすことから治療を始められる選択肢を提供します。
セリンクロの作用機序
なぜセリンクロを服用すると、お酒の量が減るのでしょうか。その作用機序は、脳内の「オピオイド受容体」に働きかけることによります。
飲酒すると、脳内では「内因性オピオイド」という物質が放出され、これがお酒の「おいしさ」や「楽しい気分」といった快感を生み出します。セリンクロは、この快感に関わるμ(ミュー)オピオイド受容体に作用することで、飲酒による快感を抑制すると考えられています。
つまり、セリンクロを服用してからお酒を飲むと、「飲んでもあまり楽しくない」「期待したほどの快感が得られない」と感じるようになり、結果として飲酒量を減らすことにつながります。
セリンクロの服用方法と注意点
セリンクロは、毎日飲むのではなく、飲酒する1〜2時間前に服用することが特徴です。これにより、飲酒の直前に薬の効果を発揮させ、飲酒量をコントロールしやすくなります。
セリンクロを服用する際には、薬の効果を最大限に引き出すために、カウンセリングや行動療法といった「心理社会的治療」との併用が前提となります。薬の力だけでなく、自身の飲酒習慣を見つめ直し、飲酒を減らすための具体的な方法を学ぶことが重要です。
また、主な副作用として、めまい、吐き気、傾眠(眠気)などが報告されています。自動車の運転など危険を伴う機械の操作は注意が必要です。
臨床試験によるセリンクロの効果
セリンクロの有効性は、国内外の臨床試験で確認されています。日本の第Ⅲ相臨床試験では、飲酒量低減効果が治療開始4週から認められ、48週まで維持されたことが報告されています。また、飲酒量を男性1日平均40g以下、女性20g以下に達成した患者の割合は、プラセボ群と比較してセリンクロ群で有意に高かったとされています。
セリンクロは、断酒のプレッシャーを感じている方にとって、減酒という新たな目標を設定し、より健康的な飲酒習慣を築くための強力なサポートツールとなりえます。治療を検討する際は、専門の医師とよく相談し、個々の状況に合わせた治療計画を立てることが大切です。
HAUDY(ハウディ)とは?
2025年9月から株式会社CureAppが開発・薬事承認および保険適用を取得した減酒(飲酒量を減らすこと)が治療目標となりうる患者さんを対象とした減酒治療補助アプリ「HAUDY(ハウディ)」が使用可能となりました。
HAUDYは、医師の診断のもと患者さんに処方されるプログラム医療機器(治療アプリ)です。アルコール依存症で減酒が治療目標となりうる患者さんの治療を補助します。スマホアプリの「患者アプリ」とWebアプリの「医師アプリ」の2つで構成され、飲酒習慣の修正による減酒を目指します。患者さんは日々「患者アプリ」を使い、飲酒記録、個別化された学習・行動を実践し、飲酒習慣の修正を行います。医師は「医師アプリ」に反映された患者さんごとのデータや心理社会的治療の支援コンテンツを確認できます。限られた診察時間内での診療の質向上が期待でき、定期的な診察の際、患者さんに目標の見直しなどの指導を行います。心理社会的治療をアプリで補助することにより、非専門医でも効果的な治療を可能にし、患者さんの治療へのアクセス向上が期待されます。
まとめ
減酒外来について解説をしました。
ラベンダーメンタルクリニック浜松町は、浜松町駅から徒歩2分、大門駅B5出口直結の位置にある精神科・心療内科クリニックです。
当院の院長は、2006年に久里浜医療センターおよび肥前精神医療センターにてアルコール依存症の研修を受け、産業医科大学精神医学教室にて久里浜式認知行動療法を行いながら臨床および研究に携わってきました。心理社会的な背景を検討し、飲酒の課題を抱えた患者さん一人ひとりの心身の不調に合わせたきめ細かな治療・サポートを行います。
患者さんの特性や症状に合わせてオーダーメイドの治療や支援を提供するため、飲酒の課題を抱えた方は一度お気軽にご相談ください。
執筆者
ラベンダーメンタルクリニック浜松町 院長・医学博士
中野 和歌子
- 日本精神神経学会精神科専門医・指導医
- 精神保健指定医
- 産業医科大学産業医学基本講座修了、日本医師会認定産業医
- 日本臨床精神神経薬理学専門医(精神科薬物療法専門医)
- 日本禁煙学会認定専門医
- 臨床研修指導医
- コンサータ処方医登録
- セリンクロ処方医
- 電車でお越しの場合
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都営バス大門駅1番乗り場、3番 乗り場から徒歩2分
