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うつ病、適応障害の休職(長期療養)について

[2024.06.09]

うつ病、適応障害になった際、その主なストレス要因が仕事であれば、医学的にはそのストレスから離れることが治療としては一番効果のあることです。一概に、休職するかは何か休職するためのはっきりとした点数などがあるわけではないので、様々な視点から判断して、休職(長期療養)を治療上アドバイスします。1回の診察で診断書をだしてしまうと、段取りがスムーズにいかないこともありますので、現在のお勤め先の制度や体制、ご自身のお気持ちなどを勘案して進めていきます。

休職を判断する目安としては以下のような職場での事例性がどの程度出ているかにもよります。

・就労が安定してできていない(心身の不調により週に2から3回突発的に休むことが増えているなど)

・また勤務していても本来のパフォーマンスが出せておらず、集中力もなくミスが増えている

大半の方が以下の点が懸念点から長期療養には躊躇されることが多いです。当然のご不安だと思います。

①業務のこと(今行っている仕事はどうしたらいいのか?営業の方であればお客様にご迷惑おかけする)

②復帰に際して(一度休んだら戻れなくなるのではないか?)

③療養中の不安(休んだ方がかえって悪くなるのではないか?)

④経済的なことへの不安(収入がなくなったら困る)

それぞれのご不安に対して、できる範囲で説明します。お勤め先やご自身の勤務年数などの状況にもよりますが、就業規則上、休職期間が十分にあるところであれば、④に関しては傷病手当金というものが受給でき、経済的には全くゼロになることはありません。

実際に長期療養をしていただく場合、どれくらい休むことになりますか?

という疑問が次に出てきます。実際のところ、例えば整形外科領域の骨折などでは全治2週間などある程度医学的に経過はわかっていますが、うつ病や適応障害の場合ははっきりとしたことが言えないことが現状です。

軽度の方であれあば、1か月、重度の方であれば1年くらいかかることもあります。状態を拝見して、3から4か月などは最低でもかかりますなどは目安としてはお伝えはしています。

仕事に復帰する場合は、病状が改善したことと仕事に復帰できる状態か(復職準備性が整っているか)はまた別の話になります。

その点で、病状が改善して、実際に復帰するまでに時間を要することもあります。

長期療養の過ごし方に関しては、3つのフェーズで考えていただきます。うつ病のケースで以下示します。

1段階目:急性期の病状を改善する時期です。うつ病であれば、抑うつ気分、意欲低下、不安感、不眠、食欲低下などの様々な症状がでていますが、まずはこの状態を改善していくことです。抗うつ薬などの薬物療法を併用し療養していきます。これまで交感神経優位で過緊張状態の方が大半ですので、長期療養に入ると、過眠といって、ひたすら寝てしまうという方も多いです。この時期は、ご自身の体調にあわせて、生活リズムはあまり気にせず、リラックスしてすごしていただいて問題ありません。必ずしもベッドでずっと横になっている必要もありません。体調が問題なければ、外を散歩などしてみるのも良いでしょう。お忙しくて家の中が片付いていない状況もあると思いますので、気が向けば、家の中の掃除をしたり、整理整頓をしたり、作業系のことをすると良いと思います。体調が悪ければむりせず横になってください。

2段階目:1から2か月経過したら、仕事のストレスから離れた環境調整と、薬物療法の効果などが通常であれば出てきますので、徐々に、症状は改善します。ある日すっきり治りました!ということはなく、波打ちながらよくなりますので、ご自身ではなかなか改善したことは気づきづらいこともあります。少しずつ本来のご自身の体調に戻ってい行きます。この時期は、体調が良い時間帯も増えていきます。その時間帯にいろいろ頑張りすぎて、1日、2日後にどっと疲れが出て、悪い日が1日、2日出てしまうという方も多いです。これ自体は問題はありません。とにかく、波打ちながらだんだんと良くなっていき、悪い時間帯が減り、悪い時間帯の程度が改善していきます。悪い時間帯の時にご自身を責めず、そういうものだと認めてあげてください。

職場に復帰を目指していくために、徐々に生活リズムを就労に則したものに戻していきます。家にいると昼寝をしてしまうことも多いと思いますので、なるべく外に行くなど、こちらか少しずつできる範囲のアドバイスをしていきます。生活リズム表というのをお渡しして、ご自身の生活、体調を見直してみて、診察時に次の1週間はこうった点を注意してやってみてくださいと細かくアドバイスしていきます。

3段階目:いよいよ復帰に向けて、最終段階の調整に入ります。ご自身の振り返りとして、職場のストレス要因としてどんなことが要因だったか、例えば人手不足で業務量が多かったのか、人間関係のことなのかなど、再発防止策として細かく検討していく必要があります。復帰に向けて、会社の上司や人事の方、産業医の方と連携をとっていただきながら、復帰に向けて調整していきます。会社の産業医と連携をとったり、社内での環境調整が必要になってきます。

はれて、復帰の日が決まったら、それはそれで一時的に不安になったり眠れなくなったりすることもあります。いったん、減らしていた抗不安薬や睡眠薬が増えることもありますが、また適宜減量できますのでご安心ください。

以上が、これまでたくさんの患者さんの就労者のうつ病の方を診察してきましたが、経験上の流れになります。

主治医が復帰してよいかの診断書はどのようなことが目安になるのか?

以下、3つです

①体調が改善していること

②就労に則した生活リズムになっていること

③仕事がストレスであれば、その要因がある程度わかり、解決、整理ができていること

 落としどころ、折衷案があるということ

この3つの条件が十分にそろっていない、上記の1段階目や2段階目で、焦って復帰したいと思われる方も多いです。

仮に、その時に復帰してしまった場合は、残念ながら復帰後、すぐに再発(と言いますか、改善していない段階で戻っているので)し、再休職になってしまうことがあります。それは、誰にとっても良い結果をもたらしません。

本来、復帰の準備のプロセスが十分に整っていない段階で復帰しているのでこちらからすると当然の経過なのですが、ご自身は体調がよくなってもどれたのに、またすぐに体調が悪くなってしまったととても自信を失ってしまいます。また職場の方も復帰してまたすぐに体調を崩してしまったということで印象が悪くなります。こういった、ことを防ぐために休職期間が十分にあるかたは、あせらずプロセスを踏むことが大事になります!

復帰したいという患者さんを説得して治療を継続することは主治医からするととても時間がかかりエネルギーを要します。しかし、こういった、最終的な残念な結果にならないことを目指して、治療をすることが主治医の役目だと持っています。

もちろん、十分に準備をして復帰をした後も再発してしまうことは病状や環境によってはあります。それは致し方ないことですが、精神科医として責任をもって最大限できることはやっていきたいと思っています。

 

 

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