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大人の発達障害とは?その特徴

[2024.07.24]

大人の発達障害について当院での診断や治療の考え方について記載したいと思います。

(*発達障害は神経発達症と言われるようになりましたが、ここでは発達障害と記載します)

発達障害は自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)、注意欠如・多動症(Attention Deficit Hyperactivity Disorder: ADHD)、学習障害(Learning Disabilities: LD)の3つに分けられます。大人の発達障害は、ASDとADHDが主体となりこの2つについて以下に述べたいと思います。

ASDは、対人コミュニケーションの困難、興味や行動が偏っている、強いこだわりなどの症状があります。ADHDは、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つが特徴です。これまでは操作的な診断基準では併存を認めていませんでしたが、現在ではASDとADHDの併存は認められており、実際にこの両者が併存することは多いです。発達障害への理解が深まり、情報が一般的にも知られたことでメリットもたくさんありますが、横断的な状態や十分な心理検査などを踏まえずにASDとADHDと診断をつける過剰な診断も問題になっています。

そもそも、ASDやADHDの診断をつける意義はどんなところにあるのでしょうか?

病名がつくことで不快に感じたり不安になってしまう方も多いでしょう。一方で自分が抱えていた生活の困難さを病名がつくことで理解がすすみ安心する方もいらっしゃいます。

大人の発達障害で診断をつける意義としては「自身の傾向を知る」ことで、社会での立ち回りをよくする、生活での困難を改善することが一番大きいと感じています。「自分の説明書」ができることで、自己理解が深まること、また周囲からの理解も説明がつきやすくなることが大きくあると思います。また、例えば、いろいろな社会的な支援を受ける際には診断がつくことで利用できる支援の幅が広がる利点なども挙げられると思います。

診断をつける際に大事なことは大人になってからの横断的な特性ではなく、幼少期(12歳以下)からの継続した特性であることが診断基準では必要になります。

例えば、ADHDと診断つける際には、横断的に大人になって忘れ物や不注意が目立つということだけでは診断基準を満たしません。一方で、小学生の頃を振り返ると、不注意はあったけれども、例えば家族が忘れ物をしないようにサポートしている場合などが一般的であり保護的な環境で、表面的に見えずに生活上の困難が見られなかった場合などがあります。社会人になり、一人暮らしになって保護的な環境から外れたことで特性が顕在化することがあります。また、それの逆のような形で、もともと保護的な環境にはいたけれどもそれでも不注意は目立ってはいたが、自身で忘れ物をしないように生活上の工夫を少しずつ行うことで大人になってそんなに困らないという方もいます。

一般的に顕在化しやすい場面としては、小学校への進学、大学生への進学、社会人で一人暮らしの環境、結婚して子供を持つなどの環境の変化が挙げられます。また、それぞれの場面で、本人、周囲が「困りごと」として捉えていなければさほど問題になることではありません。

例えば、以下、極端な例にはなりますが、、、。
電車が大好きな年長さんの男の子。1日中電車を見ていたい。就学前は、ある程度自由がきいていたが、小学校進学の場面で、日本では義務教育が発生しますので学校に行く時間などある程度決まった時間の枠の中でうごかないといけません。親御さんの受け止め方によっても困り感は変わると思います。「何としてでも学校に行かせなければ」と思ってしまう親御さんがほとんどかもしれませんが、「電車が好きだから好きにさせよう」と好きなことを好きなだけさせてあげられる気持ちの余裕などがあると(あまりいらっしゃらないと思いますが)困り感としては顕在化しないのです。

特に子供の発達特性に関しては親御さんを中心とした周囲の大人の許容範囲などが顕在化するかどうかの目安にもなるかと思います。また親御さんの性格、特性の傾向もそれに影響するでしょう。発達障害の傾向は遺伝的は負因があると言われています。たいていが、両親のどちらかが自身と同じ傾向を持っています。同じ傾向を持っているがゆえに理解できること一方で多少のバリエーションが異なるため、それがゆえに心理的に負担を感じてしまうことなど親子間で様々です。

発達障害の診断は情報をある程度数回に分けて聞き取る必要があり、1回の診察では難しいことが多く、数回の診察やいくつかの心理検査を行って診断をしていきます。その点ご了承いただければと思います。

まず、ASDに関しては当院では幼少期からの生育歴の聞き取りに加えてAQ-J(自閉症スペクトラム指数)という自己記入式の検査を実施していただきます。この検査である程度の数値の目安が出ますので、参考にしながら診断をつけていきます。

ADHDの場合は、同様に、幼少期からの生育歴の聞き取りに加えてASRS
成人のADHDのチェック(ASRS v.1.1) - 武田薬品工業 | 「大人の発達障害ナビ」 (otona-hattatsu-navi.jp)

を実施していただきます。これである程度の診断の目安についてはつけることが可能ですが、WAIS-IVという詳細な心理検査が必要な場合があります。トレーニングを受けた心理士や医師が3時間程度かけて行う検査でご自身の得意不得意などがわかると同時に診断の補助には重要な検査になります。当院では現在、このWAIS-IVは実施が難しいため、この検査を実施できる心理検査に特化した施設や連携している医療機関をいくつかご紹介させていただきます。その際に、検査の予約の込み具合や地理的な立地で、検査機関を選んでいただき実施していただくこととなります。
また、この検査は一度受けるとある程度一定期間検査結果は変わりませんので、すでに過去に実施されていたようであれば、ご持参いただけると参考になりますのでありがたいです。

問診の際に重要なこととして、幼少期からの生育歴の聞き取りです。

ご自身だけでは客観的な評価は難しいと思いますので、可能な範囲で
自身の幼少期のことを知っている両親や、残っていれば自身の母子手帳や学校の成績表を持参していただけると参考になります。

また、小学校、からその後の学生時代の人間関係(友人は多かったか)、成績は良かったか(特異な教科)、社会適応をみるため、部活などには属していたか、そこでの立ち位置などを伺います。これらをまとめていただくことが事前に可能でしたら資料としてお持ちください。

初回で難しい場合でもその点、ご案内させていただきます。ご無理ない範囲で進めていきますのでご安心ください。

また、特性そのものよりも二次障害が問題になることがあります。

幼少期から叱責を続けられ自己肯定感が低下している場合は人間関係の構築が社会人になってさらに不得手になること、社会人になって特性により不適応になり、適応障害、うつ病、パニック障害などを発症することがあります。

ご本人の特性を理解し、上手に周りが支援をすることで、得意な能力を伸ばしたりすることが可能になります。著名人の方々でも、幼少期からの数々の特性と思われるエピソード、親御さんの温かい支援を聞くと、素晴らしいなあと思います。一方でそのような家庭は経済的、社会的に余裕がないと難しいことが現実であり、そのような場合はごく一部のように思います。特に、親御さんと子供のみの一対一になってしまうと、心理的にも孤立してしまい、視野が狭くなってしまうことでしょう。

相談するにしても、問題の顕在化が特出していないと学校や医療機関にも相談することも難しいこともあると思います。相談したとしても診断がつかなければ、傾向がある、あるいは様子見てくださいで終わります。

現在は情報が良い意味で、一般の方にも入手がしやすいです。特に当事者の方のお話は、医師が知識の上で伝えるよりもよほどためになると思います。最近読んだ本でおすすめの本は以下です。当事者の方が幅広い内容で記載しておりとてもバランスよく書かれていると思います。分厚い本ですが、一度困っている方は手に取っていただけると、社会的支援なども記載してあり良いと思います。

発達障害大全 ― 「脳の個性」について知りたいことすべて 単行本 – 

例えば、時間に遅れてしまうことを改善したい、というところがあると、

 それがそもそもどういう要因でなっているのかを分析します。

 ①ASDの特性により何かに過集中になってしまい、気づいたら既定の時間を過ぎていた

 ②ADHDの特性によりスケジュールを勘違いしてしまっていた

 など、その時々でいろんな背景がありますが、おおよそパターンが見えてきます。

 ①であれば、タイマーを使う、アレクサにお願いする、頼れる人に大事な時間の時は

  リマインドしておく、などなどできる工夫をアドバイスします。

 ②であれば、そもそも不定期な無理なスケジュールを組まない。仕事であれば、

  スケジュール管理の工夫を具体的にアドバイスします。

 すぐに改善することは難しいことがほとんどですが、少しずつ改善したいことを

 一緒に検討して生活の工夫を行っていきます。

 薬物療法はあくまで補助的な役割で環境調整や、行動の工夫を行っていくこともとても大事です。

当院でできる検査等は限られていますが、診療は随時受け付けていますのでお気軽にご相談ください。

当院のホームページも少しずつ詳細はアップデートしていきたいと思います。

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