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【医師解説】抗うつ薬トリンテリックス(一般名・ボルチオキセチン)とは?薬理学的メカニズムから見る効果と特徴

[2026.08.23]

うつ病の治療において薬物療法は大切な柱の一つですが、日本で処方が可能な抗うつ薬は多数あります。その中で今回のコラムでは、抗うつ薬に「トリンテリックス(一般名・ボルチオキセチン)」脳内でどのように作用し、どのような効果や特徴を持つのかについて、精神科薬物療法の視点から分かりやすく解説いたします。

トリンテリックスとはどのようなお薬ですか?

トリンテリックスは、従来の抗うつ薬とは異なる独自の仕組みを持つ「S-RIM」(Serotonin Reuptake Inhibitor and serotonin Modulator)と呼ばれる抗うつ薬です。

従来の代表的な抗うつ薬であるSSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)は、脳内のセロトニン濃度を高める働きが主でした。ボルチオキセチンはセロトニンを増やすだけでなく、複数の受容体に直接作用して細かく働きを調整する複合的な作用を持っています。

この多面的な作用によって、気分の落ち込みだけでなく幅広い症状へのアプローチが期待されています。

脳内でどのように働く?トリンテリックスの2つの作用機序

トリンテリックスの主な薬理作用は、セロトニントランスポーターの阻害と、各種セロトニン受容体への直接的な調節作用の2つに分かれます。

1. セロトニントランスポーター(SERT)の阻害

神経と神経のつなぎ目(シナプス間隙)からセロトニンが回収されるのを防ぎ、脳内のセロトニン濃度をしっかりと高めます。

2. 各種セロトニン受容体に対する調節作用

トリンテリックスは、複数の受容体に結合してその働きをコントロールします。

  • 5-HT1A受容体刺激(アゴニスト作用)・・不安の和らぎや気分の改善に関与します。
  • 5-HT1B受容体部分刺激(部分アゴニスト作用)・・神経伝達物質の分泌バランスを整えます。
  • 5-HT3、5-HT7、5-HT1D受容体遮断(アンタゴニスト作用)・・これらをブロックすることで、セロトニンだけでなくドパミンやノルアドレナリン、アセチルコリンなど多様な神経伝達物質の放出を促します。

トリンテリックスの臨床的な特徴とメリット

トリンテリックスは、脳内の多彩な神経伝達物質を活性化させることで、特有の臨床的メリットをもたらすと考えられます。

気分の落ち込みや意欲低下の改善

セロトニンに加えてドパミンやノルアドレナリンの分泌も促されるため、抑うつ気分だけでなくといった意欲の低下にもアプローチします。

集中力や思考力の低下に対するアプローチ

うつ病では「頭が働かない」「仕事の段取りが組めない」といった認知機能の低下がみられることが少なくありません。トリンテリックスはアセチルコリンなどの分泌を促すことで、このような認知機能の低下した症状の回復を後押しすることが期待されています。

副作用への配慮

受容体への選択性が高いため、従来の抗うつ薬で課題となりやすかった眠気や体重増加、性機能障害といった副作用が比較的生じにくい薬剤とされています。

服用時に知っておきたい注意点と副作用

トリンテリックスの主な副作用として、飲み始めの時期に悪心(吐き気)や胃部不快感などの消化器症状がみられることがあります。

多くの場合、吐き気などの症状は服用を継続するうちに徐々に軽快していきますが、症状がつらい場合は胃薬を併用するなどの対策を行います。

当院におけるうつ病の薬物療法への考え方

精神科の薬物療法には多くの選択肢が存在し、患者様の症状や生活背景に合わせて的確な薬剤を選択することが治療の第一歩となります。

当院では、大学病院等でうつ病の臨床研究に携わり、日本臨床精神神経薬理学専門医(精神科薬物療法専門医)の資格を持つ医師が、科学的根拠に基づいた丁寧な診療を行っています。

お薬の服用に不安がある方や、現在受けている治療について相談したい方は、「初診の方へ」のページをご覧いただき、お気軽にご相談ください。

院長 中野和歌子からのメッセージ

日々の仕事や職場の人間関係の中で、「疲れが取れない」「頭が働かず仕事が進まない」と感じてはいませんか?うつ病は決して心の弱さではなく、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで起こる病気です。

当院で扱う抗うつ薬トリンテリックスは、落ち込んだ気分を和らげるだけでなく、集中力や思考力といった「認知機能」の改善にもアプローチする特徴を持っています。そのため、デスクワークや判断力を求められる働く世代(就労者)の方々の社会復帰や業務パフォーマンスの維持において、非常に適した選択肢の一つとなり得ます。

私はこれまで、数多くのうつ病患者様と向き合ってきました。薬物療法に対して抵抗があられる患者様も多いのは事実です。一方で、抗うつ薬は適切に使えば速やかに改善していくことも多いです。当院では、日本臨床精神神経薬理学専門医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医として、これまでの経験をもとに患者様の状況に合ったオーダーメイドの治療を提案します。お気軽にご相談いただければ幸いです。

執筆者

ラベンダーメンタルクリニック浜松町 院長・医学博士
中野 和歌子

  • 日本精神神経学会精神科専門医・指導医
  • 精神保健指定医
  • 産業医科大学産業医学基本講座修了、日本医師会認定産業医
  • 日本臨床精神神経薬理学専門医(精神科薬物療法専門医)
  • 日本禁煙学会認定専門医
  • 臨床研修指導医
  • コンサータ処方医登録
  • セリンクロ処方医

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