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うつ病

 

 うつ病は、日本人の15人に1人がかかる病気で、身近な病気となり聞かれたことがある方も多いと思います。性差で言うと女性の方がうつ病になりやすいと言われています(性ホルモンの影響、結婚、育児、仕事との両立などライフイベントが多いことなどがその理由として考えられています)。
 日々の生活の中で、気持ちが沈んだり、憂鬱な気持ちになることは、誰にでもあると思います。一般的には、すぐにそれらは改善しますが、うつ病はすぐには改善せず、継続して続き、仕事をしている人であれば、仕事を突発的に休む、また家のことがほとんどできなくなるなど日常生活に問題が生じている場合が診断の基準になります。
 ICD―10による診断基準としては、抑うつ気分・興味と喜びの喪失・易疲労感の増大のうち2つ以上の症状があり、かつ以下の症状の2つ以上が2週間以上続く場合、うつ病と診断されます。

  ① 集中力と注意力の減退

  ② 自己評価と自信の低下

  ③ 罪責感と無価値感

  ④ 将来に対する希望のない悲観的な見方

  ⑤ 自傷あるいは自殺の観念や行為

 うつ病の診断基準は上記のようにありますが、上記の症状が全てそろった時期には重症度が高いことが言われています。早期発見、早期治療が治療には重要になってきますので、早めの受診を心がけていただければと思います。

 また、身体の症状がはじめに出ることも多く、ある調査ではうつ病と診断された約8割の方が、心療内科・精神科を受診する前に内科や脳神経外科などの他の身体的な症状のために受診していたと言われています。ストレスがかかると身体的な症状が出ることがよくあります。風邪をひきやすくなった、頭痛、腰痛、めまい、肩こり、倦怠感などです。また、これらの症状は自身で自覚がしやすく、病院への受診もしやすいことも特徴として挙げられます。

 うつ病は自分自身では気づきにくい病気です。家族や職場、学校などで周囲の人が気づいて治療につなげること、受診を促すことも重要になります。

 ★周囲の人が気づくうつ病のサインの例★

 【家族】

 いつもより元気がない

 逆にいつつもより元気すぎる

 食欲がない、痩せてきた

 イライラしている

 【職場】

 突発的な休みが増える

 仕事上のミスが増える

 過剰に元気にふるまう

 挨拶をしなくなる

 【学校】

 なんとなく元気がない

 逆に元気がありすぎる

 普段と様子がおかしい

 お腹やいろんなところが痛くなり、保健室に行くことが多くなる

 学校を突発的に休む

 風邪をひきやすくなる

 それでは、次にどのような治療をしていくかの説明になります。基本的には、ストレス因となっていることから離れてゆっくり休むことが第一になります。そのような環境調整を行うことと、精神療法、薬物療法が主体となります。

 仕事をされている方は、職場に行きたくない、突発的に休むことが増えたなど、社会生活に支障が出てきている場合は早めにご相談ください。場合によっては長期療養が必要なこともありますが、早めに受診すれば、休職をせずに治療を継続しながら改善することもあります。
 うつ病の明確な病態はわかっていませんが、現段階で言われていることは脳内の「セロトニン」「ノルアドレナリン」といった神経伝達物質が本来よりも低下していることが病態仮説として言われています。そのため、軽症のうつ病では必ずしも薬物療法は必須ではないこともありますが、治療においてはセロトニンを増やしたり、ノルアドレナリンを増やしたりする抗うつ薬が効果的であると言われています。抗うつ薬の効果が期待できるまでには、最低でも1から2週間かかります。また、投与初期量(最初に内服する量)と効果が期待できる量(しばらく維持して内服する量)は異なり、1週間ごとに副作用などにも配慮しながら増やしていきます。どんな副作用などが気になるかともいらっしゃると思いますが、それぞれの抗うつ薬で、得意とする効果や副作用も異なります。受診した際に症状に併せて説明と治療の流れを説明いたしますのでご安心ください。また、どうしてもお薬を飲まずに治療をしていきたいというご希望があれば、ご遠慮なくご相談ください。
 上記の薬物療法に加えてストレス因となっていることへの環境調整、精神療法を行って治療をしていきます。

 うつ病の状態になると本来の冷静な考え方ができず、判断力も鈍り、それによりミスがさらに増えます。その状態で仕事を続けることは本人、周囲にとっても好ましくありません。
 また、極端な思考になり「仕事をやめよう」「離婚をしよう」など社会的に大きな決断をしようとも考えます。最終的に病状が落ち着いてそれらの選択肢があることも否定はしませんが、うつ病の状態が悪い時は大きな決断をしないことも重要になります。

 就労者のうつ病の方を多数、精神科医として診療の中で、あるいは産業医として企業の中で見てきました。多くの方が最初は仕事を休むことに抵抗があったり、一度仕事を休んだらもう復帰できないのではないかという不安を抱えています。それは社会人として当然の不安であり考え方であると思います。よく、私が例えるのが、ガソリンが入っているところなどが故障した車だと考えてください。その状態で、一時的にその部分を修復して、車が走り出したとしてもすぐにまた安全な運転はできるでしょうか?これから、長距離の運転(長い人生)をするには、一度、修理を万全に整えて、再出発をしましょうと説明します。大体の方が納得はしてくださいます。
 また、実際に仕事を休んで、家で何をしたらよいか、こういった質問もよく受けます。「何もしなくてよい」というのは実は難しいですよね。ベッドの上でじっと寝ている必要はなく、社会的な規範にはずれることでなければ、ご自身の体調に併せてまずは好きなように生活していただきます。大半の方が、ずっと寝ていたり、過眠の時期が訪れます。治療の中で、薬物療法の効果が2から1か月で出てきますが、それにより初期の症状が改善した場合は、少しずつ本来の規則正しい生活に戻していきます。
 律動的な運動もうつ病の治療には効果的であると言われています。一番良いのは散歩することです。暑い日は熱中症に注意していただきながら、感染症の流行期には人込みを避けていただきながら、散歩する時間を作ると良いでしょう。

 また、家のなかの掃除をすることも一つです。断捨離という言葉がありますが、普段仕事などで忙しく手付かずだったところを見直してみると良いでしょう。床をふいたり、無心になれる作業もお勧めしています。

 うつ病の治療といっても、いくつかの時期に分かれて、生活上気をつけることが違います。

治療の初期、中期、後半です。先に述べたのは治療の初期の話になります。中期、後半に関しては、治療の中でこれまでの経験から適切にアドバイスを行っていきます。

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